自社ローンは、銀行やディーラーローンとは異なり、車の販売店が独自に提供する分割払いサービスとして多くの人に利用されています。
自社ローンは金利が0%である場合もありますが、「金利がかからないなら絶対にお得」と安易に考えて契約すると、思わぬ落とし穴にはまってしまう可能性があります。たとえば、手数料や諸費用が高額に設定されていたり、車両価格自体が相場より高く設定されていたりして、結果的に総支払額が他のローンより高くなるケースも少なくありません。
このような失敗を避けるためにも、自社ローンの金利システムや特徴を正しく理解してから契約を検討することが重要です。
本記事では、自社ローンの金利について、メリット・デメリットや審査のポイントを交えて詳しく解説します。
自社ローンとは車販売店が独自に実施するローンのこと

自社ローンとは、銀行などの金融機関やディーラーを通さずに、中古車販売店が自社で購入代金を立て替えて、お客様に分割で支払ってもらう仕組みのことです。
通常のカーローンでは、銀行や信用金庫などの金融機関が審査をおこない、お金を貸し出します。しかし自社ローンでは、車を売る販売店が直接お金を立て替えるため、金融機関の厳しい審査基準に縛られることがありません。
そのため、過去にクレジットカードの支払いを遅延してしまった人や、転職したばかりで勤続年数が短い人でも、車を購入できる可能性があります。
【結論】自社ローンは一般的に金利がかからない!

自社ローンの最大の特徴は、基本的に金利が0%であることです。これは、自社ローンが銀行などの金融商品ではなく、販売店内での分割払い契約という位置づけになっているためです。
金利がかからないことで、毎月の返済額を抑えられ、家計への負担を軽減できます。
ただし、金利がかからない代わりに、事務手数料や保証料といった名目で別途費用が発生する場合があります。また、車両価格自体が他の販売店より高く設定されているケースもあるため、契約前には総支払額をしっかりと確認することが大切です。
各カーローンの金利の相場

車を購入する際に利用できるローンには、それぞれ異なる金利設定があります。
以下の表で、主要なカーローンの金利相場を比較してみましょう。
ローンの種類 | 金利相場 |
---|---|
自社ローン | 0% |
銀行系ローン | 1%~5% |
ディーラーローン | 6%~9% |
銀行系ローンは最も金利が低く設定されていますが、審査が厳しく時間もかかります。ディーラーローンは手続きが簡単で審査も比較的通りやすいものの、金利は高めに設定されています。
自社ローンは、貸金業ではないため金利が0%です。ただし手数料や保証料などで追加費用がかかるため総支払額は高くなるケースも少なくありません。
なお、これらの金利は、借入金額や返済期間、申込者の信用状況によって変動するため注意が必要です。
金利0円以外の自社ローンのメリットとは?

自社ローンを検討する際、「金利0%だけがメリット」と考えてしまうと、本当に自分に合ったローンかどうかを正しく判断できません。
実際には、自社ローンには審査の通りやすさやスピード感など、金融機関のローンでは得られない独自のメリットが数多く存在します。
これらのメリットを知らずに選択肢を狭めてしまうと、より良い条件で車を購入できる機会を逃してしまう可能性があるでしょう。
ここでは、金利0%以外の自社ローンのメリットについて、以下の5つのポイントを解説します。
①選べる車の種類が豊富
自社ローンを提供する販売店では、さまざまなメーカーの中古車を幅広く取り扱っているため、選択肢が豊富です。一方、ディーラーローンの場合は、そのメーカーの車しか選べないため、比較検討の幅が限られてしまいます。
また、インターネットの在庫情報に掲載されていない車が、店舗に入庫しているケースも少なくありません。
在庫がない車もホームページにまだ掲載されていないだけの可能性があるため、欲しい車種が見つからない場合はまずは店舗や公式サイトに問い合わせてみましょう。
②審査に通りやすい
自社ローンの審査は、銀行やクレジット会社の厳格な基準とは異なり、販売店独自の柔軟な判断でおこなわれます。過去にローンの支払いを遅延してしまった人や、クレジットカードで延滞履歴がある人でも、現在の収入状況や返済能力を重視して審査してもらえます。
販売店側も「この人なら確実に支払ってくれそう」と感じれば、過去の信用情報よりも現在の状況を優先して判断してくれるのです。
ただし、あまりにも収入が不安定だったり、他社からの借入が多すぎたりする場合は、審査に通らないこともあるため、現在の支払い能力を高めておくことが大切です。
③即日に審査結果が出る可能性がある
自社ローンの審査は、金融機関のような複雑な承認フローがないため、スピーディーに進みます。銀行系ローンでは数日から一週間程度かかる審査も、自社ローンなら必要書類が揃えばその日のうちに結果が出ることもあります。
これは、販売店が独自の基準で直接判断するため、外部機関との連携や複数の部署での検討が不要だからです。
忙しくて時間をかけられない人にとっては、このスピード感は大きなメリットになるでしょう。
④審査が通れば納車可能
銀行系ローンの場合、審査通過後も金融機関との契約手続きや融資実行まで数日かかることがあります。
一方、自社ローンでは販売店内ですべての手続きが完結するため、条件が整っていれば契約書にサインをしたその日に車を受け取ることも可能です。
仕事で急に車が必要になった場合や、現在の車が故障して代替手段が必要な場合など、緊急性の高い状況では頼りになります。
⑤信用情報を気にせず利用できる
自社ローンでは、個人の金融取引の履歴である「信用情報」を専門機関に照会しないケースがほとんどです。記録が残らない場合が多いため、過去のクレジット履歴を心配する必要がありません。
通常のローンでは、CICやJICCといった信用情報機関にこれまでの支払い履歴が記録されており、延滞や債務整理の記載があるとローンの審査に影響します。
しかし、自社ローンの場合は過去にクレジットカードでトラブルがあったとしても、販売店独自の審査をクリアできれば契約可能です。
利用前に確認!自社ローンにはデメリットも存在する

自社ローンのメリットばかりに注目して契約してしまうと、後で想定外の制限や負担に直面して後悔することになりかねません。
実際に、「信用情報を見ないから、絶対大丈夫」と考えると、いざ審査で断られた際に時間や労力だけが浪費され、他のローンを検討する余裕も失うかもしれません。
このような失敗を避けるためにも、契約前にデメリットもしっかりと把握し、自分の状況に本当に適しているかを冷静に判断することが重要です。
ここでは、自社ローンの主なデメリットについて、以下の3つのポイントを解説します。
①完済までは車の所有権を販売店が持つ
自社ローンでは、ローンを完済するまで車の名義(所有権)が販売店のままになっているため、自由な車の売却や譲渡ができません。
もし支払いが滞ってしまった場合、販売店は車を回収できる権利を持っているため、いきなり車を失うリスクがあります。
また、急にお金が必要になって車を売りたくなっても、販売店の許可なしには売却できません。名義変更の手続きや費用についても、契約時にしっかりと確認しておくことが重要です。
②高額なローンは組めない可能性がある
自社ローンでは、販売店が独自に設定する上限額があるため、高額な車両を購入したい場合は希望通りのローンを組めない可能性があります。
一般的に、自社ローンの借入上限は年収によって異なりますが、100〜150万円程度に設定されていることが多く、高級モデルや新しい年式の車両を購入するのが難しい場合があります。
自社ローンは借入金額に制限があることを理解して、現実的な予算設定をおこなうことが大切です。
③支払総額が金融機関のローンより高くなるケースがある
自社ローンは金利0%というメリットがありますが、最終的な総支払額は銀行ローンなどよりも高くなることがあるため注意が必要です。
販売店は、金利を設定しない代わりに、手数料や保証料といった名目で車両本体価格に費用を上乗せして利益を確保しています。
契約前には必ず詳細な見積書を取り、総支払額はいくらになるのかを正確に把握し、他のローンと比較検討することが重要です。
自社ローンの審査で見られるポイント

自社ローンの審査は販売店独自の基準でおこなわれますが、もちろん誰でも無条件で通るわけではありません。
「何も準備しなくても通るだろう」と準備不足で申し込むと、審査に落ちてしまう可能性があります。
事前にこれらの項目を把握し、自分の状況をきちんと説明できるよう準備しておくことで、審査を有利に進められるでしょう。
ここでは、自社ローンの審査で重視されるポイントについて、以下の5つを解説します。
①年収・勤続年数
自社ローンの審査では、申込者の支払い能力を判断するため、現在の収入状況が非常に重要なポイントになります。
勤続年数が長いほど、今後も安定して収入を得られる可能性が高いと判断されるため、審査に有利に働きます。勤続年数が短い場合でも、源泉徴収票や給与明細書などの収入証明書類を準備し、安定した収入があることを具体的に示すことが審査通過のカギです。
②他社からの借入状況
現在、複数のローンやリボ払いがあると、返済能力を疑われ、詳しく調査されます。
複数の会社から多額の借入があると、収入に対して返済の負担が大きく、支払い能力に余裕がないと判断され、審査に不利に働く可能性があります。自社ローンは信用情報を照会しないことが多いとはいえ、申込時のヒアリングなどで借入状況について正直に申告を求められることがほとんどです。
販売店も貸し倒れのリスクは避けたいと考えているため、現在の負債状況は隠さずに伝えるようにしましょう。
③月々の支払い可能額
申込者が現実的に毎月どの程度払えるのかは重要なポイントです。販売店は、申込者の収入と家賃や光熱費などの支出のバランスを考慮し、提示された返済計画が現実的かどうかを慎重に見極めます。
口約束ではなく、具体的な数字や家計状況を説明できると説得力が増すため、家計の収支状況を具体的に説明できるよう準備することが重要です。
説得力のある返済計画は、審査を通過するための強力な後押しとなるでしょう。
④頭金の有無
購入時にある程度の頭金を用意できるかどうかは、審査通過の確率を大幅に高める重要な要素です。
頭金があることで、販売店側の貸し倒れリスクが減少し、申込者の購入意欲の高さも示せます。頭金が多いほど、月々の返済負担が軽くなるため、収入が不安定な人でも契約できる可能性が高まります。
頭金が用意できない場合は、返済能力や保証人の有無など、他の要素でのカバーを検討しましょう。
⑤保証人の有無
保証人を立てられれば、審査通過の可能性が向上し、より良い条件で契約できる場合があります。保証人がいることで、万が一申込者が支払いできなくなった場合でも、販売店は保証人から回収できるためです。
とくに、収入が安定している家族や親族に保証人になってもらえれば、審査担当者も安心して契約を承認してくれるでしょう。
ただし、保証人には法的な責任が発生するため、事前に十分な説明と同意を得ることが重要です。
自社ローンが向いている人の特徴

どんなに優れたローン商品でも、自分の状況に合わなければ意味がありません。
自社ローンは、一般的な金融機関のローンとは異なる独自の基準で審査をおこなうため、特定の状況にある人にとって非常に有効な選択肢となります。
自分が自社ローンに向いているかどうかを事前に確認せずに契約すると、他の選択肢のほうが良い条件で車を購入できたということになりかねません。
ここでは、自社ローンがとくに向いている人の特徴について、以下の5つのパターンで解説します。
①安定した収入がない人
パートやアルバイト、フリーランスなど、収入が不安定な雇用形態の人でも、自社ローンなら契約できる可能性があります。銀行系ローンでは、正社員でない限り審査に通りにくいのが現実ですが、自社ローンは販売店が柔軟に判断してくれるためです。
ただし、収入があまりにも不安定だったり、極端に少なかったりする場合は審査に通らない場合もあります。大切なのは、現在の収入状況を正直に説明し、無理のない返済計画を提示することです。
②転職したばかりの人
転職して間もない、勤続年数が短いという理由で、一般的なローンの審査に通りにくいと感じている人にも自社ローンはおすすめです。
銀行系ローンでは通常、勤続年数1年以上が求められることが多いのに対し、自社ローンでは試用期間中でも相談に応じてくれる販売店もあります。
転職により収入がアップした場合や、より安定した職場に移った場合は、その点をしっかりとアピールすることで審査に通る可能性が高まります。
③すぐに車が必要な人
転勤や就職、家族の送迎など、生活スタイルの変化によって急に車が必要になった場合、自社ローンは頼りになる存在です。
審査から契約までの手続きが販売店の中だけで完結するため、銀行ローンなどと比較してスピーディーに進みます。申込みをした当日や翌日に審査結果が出ることが多く、契約が完了すればすぐに納車の準備に入ります。
とにかく早く車を手に入れたいという切実なニーズに応えてくれる、便利な選択肢といえるでしょう。
④金融機関のローンに落ちてしまった人
自社ローンは販売店独自の基準で「現在の返済能力」を最も重視して審査をおこなうため、過去の金融トラブルを理由に、一律で門前払いされる心配は少ないです。
そのため、自己破産や個人再生などの債務整理をおこなった人でも、一定期間が経過し、現在の生活が安定していれば相談に応じてくれる販売店もあります。一度はあきらめかけた人でも、自社ローンなら再チャレンジの機会があります。
⑤ブラックリストに登録されている人
信用情報機関に事故情報が登録されている、いわゆる「ブラックリスト」の状態でも、自社ローンなら契約できる可能性があります。
ブラックリストに登録されている状態では、金融機関のローン審査に通過することは極めて困難です。一方、自社ローンは現在の収入状況などから「完済能力がある」と判断すれば、契約に応じてくれる場合があります。
まずはあきらめずに、事情を正直に話して相談してみることが大切です。
自社ローンで金利を抑えて月々の負担を少なくしよう

本記事では、自社ローンの金利について、メリット・デメリットや審査のポイントを詳しく解説しました。
自社ローンは金利0%という最大のメリットを活かして、月々の返済負担を大幅に軽減できる優れたローン商品です。
審査基準も販売店が独自に設けているため、過去の信用情報に不安がある人や、収入が不安定なことを理由に他のローンをあきらめていた人でも、マイカーを手に入れるチャンスが広がります。
ただし、金利がない代わりに手数料が車両価格に上乗せされ、結果的に総支払額が高くなる可能性があることや、ローン完済まで車の所有権が自分のものにならないといったデメリットも存在します。
これらのメリットとデメリットを正しく理解し、総支払額を必ず確認した上で、ご自身の状況に最も合った支払い方法を選択することが、後悔のない賢い車の買い方といえるでしょう。